2020年1月22日(水)、東京都港区の日本財団ビルにて「ラグビーワールドカップ2019のボランティアを語る」をテーマに公開講座が開催され、100名を超える参加者で大盛況となりました。2名のボランティア経験者とファシリテーターによる座談会形式で、大会ボランティアの振り返りを通してどのように東京2020オリンピック・パラリンピックなどのボランティアにつなげていくかを展望しました。
冒頭のファシリテーター澁谷氏による振り返りでは、大会をさまざまな角度から数値で紹介し、ボランティア「TEAM NO‐SIDE」には募集1万人に対して3万8千人の応募があったことが伝えられました。今後に向けて、特定のイベントでの経験者だけで固まらずに新しい人を仲間として受け入れる広い心を持ってほしいとの話もありました。
次に座談会で、大会ボランティア経験者の荒木氏と松下氏を交えて、今回の経験について語り合いました。以下、Q&A形式での紙上採録です。
澁谷氏Q:どういう活動内容でしたか?
荒木氏A:準備期間中は研修の講師を3か所で担当。大会期間中は横浜でアクレディテーションカード発行を13名で担当し、裏方で海外メディア等の大会関係者とも関わる役割でした。
松下氏A:東京でバックスタンド側の座席やトイレやフードコートの案内をする観客サービスをリーダーとして担当しました。
澁谷氏Q:活動の中で苦労したことは?
松下氏A:トイレの整列と車いす対応とチケットの誤発券対応でした。外国の方が多い試合では、並ぶ習慣がない人にトイレに並んでもらうのが大変で、メンバーや近くのセキュリティ担当と相談・連携しながら対応しました。車いす利用の観客はバックスタンド側には来ないと聞いており、付き添い者用のパイプ椅子の用意がなかったのですが、実際には毎回数組がいらっしゃり、その都度椅子をどこかから調達しなければなりませんでした。チケットの誤発券対応は、判別方法を手などにメモして観客にわからないように見ながら案内をしました。
荒木氏A:必要なアクレディテーションカードは事前に用意されていたので、イレギュラー対応で10枚位を発行する程度なのにメンバーは多く、時間をつぶすほうが大変でした(笑)。
澁谷氏Q:やりがいを感じたことは?
荒木氏A:ユニフォームを家から着て会場へ行くルールだったので、初めは恥かしかったのですが、だんだんと楽しくなり、行く途中で困っている観光客に声をかけて案内をすることもありました。
松下氏A:誘導の仕方や休憩の取り方について皆で相談後、スーパーバイザーに相談して徐々に改善されていきました。
澁谷氏Q:これまでに経験したスポーツボランティアとの違いは?
荒木氏A:スポーツボランティア経験のない人が多く、新しい動きを感じました。専門的なスキルが必要ということもなかったので、それでも問題はありませんでした。
松下氏A:スーパーラグビーに長く関わっていますが、それと比べて幅広い年齢層や車いす利用の観客が多いなど、多様性が豊かだったと感じました。
参加者の中から、札幌、釜石、東京のハブ拠点、大分での活動経験者の話を伺うこともできました。さらには、大会組織委員会でボランティアを担当した神野氏と佐藤氏から、「TEAM NO-SIDE」は大会の顔であり、大会の付加価値を作り上げることができたとの話がありました。
今回は短い時間の中でさまざまな角度から盛りだくさんの話を聞くことができました。今回初めてスポーツボランティアを経験した方のみならず、スポーツボランティア経験者においても、新たなスポーツボランティアの一面を経験できたことと思います。
私自身は熊谷で会場周辺やファンゾーンのガイドを経験しました。東京2020オリンピック・パラリンピックではシティキャストとして活動する予定です。今回の公開講座によって再確認できたことは、観客やメンバーや関係者の多様性を尊重してともに楽しむこと、リーダーは常にアンテナを張ってメンバーが動きやすいように活動をブラッシュアップさせていくことです。これをぜひともシティキャストの活動で生かしたいです。
【報告者:中井幸子】