2018年3月28日(水)に「スポーツボランティアで得たかけがえのない経験」と題した公開講座を開催し、60名の方にご参加いただきました。ロンドン、ソチ、リオデジャネイロの3回のオリンピックでボランティア経験を有する日本スポーツボランティアネットワーク特別講師の西川千春氏より、3大会での体験談に加えて2020年東京オリンピック・パラリンピックでのボランティアを目指している方へのアドバイスなど、以下のようなお話がありました。
まず定義を考えると、公共性+自主性=ボランティアとなります。有償無償に関わらずボランティアという言葉は元々志願兵から来ており、自主的な行動でなくてはいけないのです。日本では参加を余儀なくされる町内会の活動や学校の動員によってする活動などもありますが、これは本来のボランティアでありません。次に、ロンドンではオリンピック・パラリンピック開催の目的として、英国をスポーツ先進国として発展させる、貧しい地域の再開発、オリンピックパークを持続可能な生活空間のモデルとするなど、明確に表明してイギリス人の理解を得ました。この点について2020年東京オリンピック・パラリンピックではどうでしょうか。では、どうして無償で自己負担してまでボランティアをするのでしょうか。イベントの成功に貢献したい、自分の経験や能力を社会に還元したいなどの動機が挙げられますが、ボランティアに携わることによって新しい友達ができ、普段出会わないような人たちと出会うことが魅力となり活動を続ける人もたくさんいるのです。
オリンピック・パラリンピックのボランティアは開催の約2年前に募集開始、約1年前に採用・配置決定の予定です。応募はすべてウェブで行われ、入力には30分ほどかかります。ボランティアのトレーニングは、オリエンテーションや役割別トレーニングなどが3日間ほどあり、リーダートレーニングはより長い研修となります。また、会場別トレーニングもあります。オリンピック・パラリンピックのボランティアにおいて外国語の必要性を意識している方が多いですが、すべての活動に英語が必要なわけではありません。ソチとリオデジャネイロでは学校での英語の学習経験がない人たちがほとんどという状況でした。日本人は元々英語に対して基礎的な学習をしているので、ベーシックなところは心配ないと思っています。また会話については中学校の英語ができれば十分だと思います。
いまやボランティアは大会の顔であり、開催国の国民の代表として見られる存在でもあります。学生、働く世代、シニア、障害者、LGBT、外国人など幅広いバックグラウンドを有する方が参加します。参加への敷居を低くすることで、多様性の容認を体現する場所になっています。元々ボランティア文化のあるロンドンではボランティアの平均年齢は44才でしたが、ボランティアが文化として根付いていないソチでは学生主体でしたので平均年齢は23才でした。また、リオデジャネイロのボランティアにはイギリス人5,000名が応募し、1,500名が実際に参加しましたが、アメリカ人はさらに多かったと聞いています。東京大会へは多くの外国人ボランティアに参加してほしいと考えています。ロンドン大会のレガシーの一つとしてボランティアのデータベースを使い、オリンピック・パラリンピックで終わりではなくその後もいろいろな活動に参加できるように情報が発信され、活動の継続が促されています。みなさんも一歩踏み出して素晴らしいチャンスを楽しんでください。
【報告者:及川 登代子】