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2021-09-16

不可能を可能に変えた東京2020大会(前編)

西川 千春さん

Nishikawa Chiharu

[所属] 笹川スポーツ財団特別研究員
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 ボランティア検討委員
日本スポーツボランティアネットワーク特別講師

不可能を可能に変えた東京2020大会 (後編)はこちらから

忘れることのできない一生の思い出

幕張メッセCホールで開催されたパラリンピック・女子ゴールボール競技の最終日。銅メダルをかけて日本対ブラジルの試合が始まりました。

前日の準決勝では絶対王者トルコの圧倒的なプレーに一歩及ばず。それでも予選リーグでの完敗のリベンジを、と臨んだ日本代表チームの健闘は胸を張れるものでした。気持ちを入れ替えて臨んだ3位決定戦では完璧なプレーで6-1の圧勝。抱き合い涙を流す6人のメンバー。そしてお互いに相手を称えあう両チーム。
「静寂の格闘技」ともいわれるゴールボールを担当し、選手たちのとてつもないパフォーマンスを目の当たりにしたこと、まさに一生の思い出となりました。

選手たちの研ぎ澄まされた聴覚と、それに反応するスポーツ選手としての類なき能力は正に「スーパーヒューマン」です。
そして繰り出される迫力満点のボール。テレビでは見たことがありましたが、この競技を生で見られたことは本当に素晴らしい体験でした。

またもう一つの発見がありました。
選手たちのインタビューを担当して分かったのですが、彼らの言語コミュニケーション能力が非常に優れているという事実です。視覚障害があるが故、自分の考えや気持ちを的確で明瞭な言葉で伝える優れた能力が必要とされます。
男子チームの川嶋選手が観戦に来ていた子供たちに、
「このゲームはコミュニケーションが全てであることを体験してもらいたい」と答えていたのは印象的でした。
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写真:今大会もミックスゾーンでの通訳を担当した

5年間の特別な思い

今回、私は過去大会同様に言語サービスに配属され、ミックスゾーンと呼ばれる試合直後のインタビューが行われる場所でメディアと選手の間に入って通訳を行いました。
オリンピックでは東京体育館で行われた卓球を担当。主に大会の公式報道機関であるOBS(オリンピック放送機構)とOIS(オリンピック情報サービス)がパートナーとなります。また国際競技連盟や指定通信社、場合によっては一般の放送局や新聞記者に対応することもあります。

オリンピックでは卓球日本が大活躍。
今回初めて採用された混合ダブルス決勝では、伊藤・水谷組が世界ランキング一位の中国ペアを2ゲーム目から巻き返し、そのまま勝利。日本にオリンピックで卓球初の金メダルをもたらしました。その歴史的瞬間を目の当たりにして、ミックスゾーンのOBSブースで待機していた私は思わず涙。通訳でも思わず詰まってしまう有様です。
ゴールボールの銅メダルインタビューでは彼女たちの笑顔のお陰で何とかこらえましたが、最後の一礼をしてコートを去ってゆく彼女たちを見送った瞬間にまたもやあふれる涙です。
私にとって、今大会のキーワードは「感激の涙」といってもいいでしょう。

幾たびも流した涙には、特別な訳があります。
オリンピック好きの開催地市民として初めて参加したロンドン大会。
大会後の虚脱感から思わず応募をクリックしてしまったソチ大会。
そしてサンバの高揚感で楽しんだリオ大会。
今回は生まれ故郷で開催される大会であり、当初からアドバイザー、ボランティア検討委員としてボランティアプログラムの立ち上げから5年にわたって関与してきました。当然のこととして、特別な思いがありました。

余談ですが、検討委員会では経験からアイスクリームがボランティアの士気高揚にどれだけ有効かを熱弁。その結果かどうかはわかりませんが、組織委ボランティア推進部のお陰でボランティアに毎日提供されることになったのです。
大会期間中、フィールドキャストのアイスツイートがなんと多かったことか!アイスクリーム好きが高じた結果でしたが、検討委員として一番の貢献かもしれません(笑)。
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写真:休憩室に設置されたアイスクリーム。ボランティアたちの楽しみの1つでもあった。

多くの関係者・スタッフに支えられた大会

コロナパンデミックは全てを変えてしまいました。
前代未聞の1年延期が発表され、選手たちはパンデミックの中で本当に大会が開催されるのか、という不安と戦いながら自分ができる精一杯の努力をしてきたはずです。状況は違っていても、大会にコミットしてきたボランティア達も同じ気持であったに違いありません。少なくとも私はそうでした。状況が悪化する中で、世の中がネガティブな空気に包まれ、誰もが黙ってしまう世界。飛び交うのは主催側への批判、不安をあおるニュースと誹謗中傷ばかり。

しかし、無観客というフルバックポジションを取りながらも開催が決定しました。
そこに至るまでの現場スタッフ・関係者の努力は想像を絶するものだったはずです。
そして全国から駆けつけた自衛隊、警察、消防、海保の皆さんが選手をはじめとする関係者と大会の安全を守ってくれました。
また関係者への積極的なワクチン接種、頻繁に行われるPCR検査やプレーブックによる感染防止対策も徹底していました。
その結果、期間中の関係者感染率は約0.02%と日本全国平均の約1%を大幅に下回っています。

後編はこちら

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写真:開閉会式が行われたオリンピックスタジアム

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