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2021-03-29

ボランティアの未来を照らす希望の光を求めて

西川 千春さん

Nishikawa Chiharu

[所属] 笹川スポーツ財団特別研究員
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 ボランティア検討委員
日本スポーツボランティアネットワーク特別講師

聖火リレーが空気を変えたロンドン大会

3月25日、とうとう待ちに待った聖火リレーが福島のJヴィレッジを出発しました。これから121日間、約1万人ものランナーに引き継がれ日本全国を回ります。聖火リレーといえば、2012年のロンドンオリンピックが思い出されます。

多くの近代スポーツの発祥地であるイギリスは当時不況にあえぎ、国民は自信を失っていました。そういった中で青少年たちに夢を与え、ロンドン東部地域の再開発を促進し、イギリスのPRをすることで海外からの投資を呼び込むことを目的に、2012年大会のロンドン招致に成功したのです。

しかしながら、当初から必ずしも国民すべてがオリンピック・パラリンピックの開催を喜んでいたわけではありません。2008年にはリーマンショックの追い打ちでさらなる落ち込み。「そんなことに金を使う前にすることがあるだろう」「期間中はロンドンの都市機能停止」「どうせ失敗して世界の恥さらしになるだけ」といった声があちらこちらで聞かれました。

ところが聖火がロンドンに入ってきた途端、奇跡のように空気が一変したのです。その年の夏は雨ばかりで天気が悪くなんとも肌寒かったのを覚えてます。それが一転嘘のように晴れ渡り、気温も25度を超え出したのです。

今までパブでビールを飲みながらオリンピックの文句ばかり垂れてた友人のジョン も「いよいよだな、楽しみ!」なんていい出す始末。そして最後はフットボールの英雄でロンドン下町の出身でもある、デイビッド・ベッカムがモーターボートに乗って聖火と共にテムズ川を猛スピードでオリンピックスタジアムまで届けました。

聖火には不思議な魔力があるに違いありません。

何事もにも代えがたいボランティア仲間との再会

一方でコロナウィルスCOVID-19は世界を全く別物に変えてしまいました。先日、組織委員会は海外からの観客の受け入れを断念すると発表しました。選手・関係者だけでなく、世界中から観客が大会に集まることで東京が普段とは全く違った色に染まり、まさに世界的メガイベントになるはずでした。

そしてそのニュースに続いて海外在住のボランティアの受け入れも一部の例外を除き、基本的に見送ることになったのです。

実は選手と同じくボランティアも世界中から集まってくるのです。リオ大会では5万人の大会ボランティアのうち1万人、つまり20%が外国人でした。今回の東京大会では20万人を超える大会ボランティアへの応募があり、このうち約120にものぼる外国籍の数万人が応募。最終的には選ばれた8万人のうち1万人近いボランティアが外国籍です。日本在住の外国人も約7,000人いますが、2,000人以上は東京大会のフィールドキャストとして日本にやってくる予定でした。

「オリンピックおじさん」と呼ばれ、いつのオリンピックでも金色のシルクハットに羽織はかまで日の丸を振って応援する男性を覚えていらっしゃるでしょう。私もロンドン大会でお姿を拝見しました。レスリング会場のエクセルアリーナで 元気いっぱい応援する姿が目に焼き付いてます。お名前は 山田直稔(やまだ なおとし)。1964年の東京大会から2016年リオ大会まで14回連続で夏季大会の応援に現地へ駆け付けた筋金入りのスーパーファンです。残念ながら2年前の3月9日に92歳で亡くなりました。今回の東京大会の応援ができなかったことはさぞかし心残りだったでしょう。

山田さんほどではないにしろ、過去大会に何度も参加しているオリパラボランティア達が世界中にいるのをご存知でしょうか?この人たちにとってはどこで大会が開催されようと関係ありません。オリンピック・パラリンピックへの思いが4年に一度、あるいは冬季も合わせれば2年一度の海外遠征に掻き立てるのです。

私もロンドン、ソチ、リオと3大会のボランティアを経験しました。リオではロンドン大会で知り合った仲間たちとの再会は何事にも代えがたい思い出です。またオリンピック・パラリンピックだけでなく、世界陸上、車いすテニスマスターズ、ワールドカップ卓球などの国際大会でも見知った顔と遭遇するのです。皆、やめられないんですよね。

今はフェイスブックをはじめとするSNSのおかげでボランティア仲間のネットワークはレガシーとなって引き継がれていきます。いってみればお互い「人生最高の2週間」を共有した同志なのです。もう一つの家族のようなものといってもいいでしょう。

Hope Lights Our Way

そういった中で、ここ数カ月の彼らの心の中はひどく揺れ動いていました。
一部の国ではワクチン接種が始まり感染者・死者の減少が報道されているものの、世界的には依然終息の兆しが見られません。

東京大会は本当に開催されるのか、海外から日本への渡航は可能なのか。様々な情報やうわさがSNSで飛び交い、ここ数日は混乱の極致といってもいい状況でした。

特に今回の報道があるまでは渡航可能な国からの場合14日間の隔離期間が必要で、その費用は自己負担である旨の説明がありました。「それでも私は東京に行く」というボランティア達もたくさんいたのです。

ロンドンに住むポールもその一人です。
7歳の時に白黒テレビで観た1964年東京大会の強烈なインパクトが彼を熱狂的なオリパラファンへ変身させてしまいました。大会期間中は朝から晩まで毎日テレビにくぎ付け。仕事を始めてからもその期間中は2週間の休暇を必ず取るのです。そういった中で2012年のロンドン大会で初めてオリンピック・パラリンピックボランティアを経験し、リオ大会にも参加しました。そして東京大会では東京スタジアム、武蔵野の森総合スポーツプラザのイベントサービスチームリーダーとして活動する予定でした。

彼と一緒に杉並区の協力を得て、イギリスからくるボランティア達の為に廃校となった小学校を宿舎としてボランティアハブにする計画も進んでいました。ポールはイギリス側の取りまとめをしてもらい東京での出会いを楽しみにしてました。

それでも、3 月27日にオンラインで開催され、3千人のボランティアが参加した「Tokyo Volunteer2020 ボラサポフェス~動かせ。世界中の気持ちを~」(主催・日本財団ボランティアサポートセンター)では大会関連ボランティアの 皆さんにポジティブなメッセージを贈ってくれました。

話を聖火リレーに戻しましょう。実は私も7月3日に地元千葉の船橋区間でランナーとして走る予定です。フィールドキャストの一員として、そして残念ながらマッチングされなかった多くの人々、また今回の海外ボランティアも含め様々な理由で参加を断念せざるを得なかった仲間たちの思いを胸に、日本そして世界に東京大会のメッセージを届けたいと思います。

“Hope Lights Our Way”(希望の道を、つなごう)

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