メインロゴ
  1. スポボラ.netトップ
  2. 活躍する人たち
  3. 古澤 直樹さん

2021-03-24

車いす単独大会の、伝統の灯を消さないために 【後編】

古澤 直樹さん

furusawa naoki

[所属] 大分国際車いすマラソン事務局、大分県福祉保健部 障害者社会参加推進室 地域生活支援・芸術文化スポーツ推進班 主事 

コロナ禍でも大会の歴史をつなげられた理由は?

中止ありきでなく、どうしたらできるかを考えた

まずは、早い段階で延期や中止の判断をせず、努力の成果を発揮する機会が失われている選手の目線に立って、開催するためにはどのような対策を講じればよいのかと検討したことだと思います。

そのために、地元の医療機関や医療従事者に協力をあおぎ、さまざまな感染拡大防止対策を早めに打ち出すようにしました。そして、選手やボランティア、関係者に、「こういう対策を実施するので、安全だと信じて参加してほしい」と丁寧に説明し、同意書をいただくなど理解を得ていきました。

大きかったのは「丁寧なコミュニケーション」だと思います。選手の意見をまず聞いたこと。ボランティアに対して事前に説明会を開き、特に核となる担当者、例えば審判員などとは打ち合わせを数回も重ねることで、精度も高めるように努めました。

「大会中止」という方向に持っていくことは簡単だったはずですが、大会を渇望する選手たちの声に応えたいと、事務局としては常に開催の方向で知恵を絞り、やれるところまで準備しようという姿勢でした。ただし、開催を強行するつもりはなく、感染状況しだいでは中止の判断も仕方ないという思いは最後まで持っていました。
-----------
写真:大会前日に行った選手へのPCR検査。地元の医療機関や医療従事者の協力がなければ大会の成功はなかった

具体的なコロナ感染防止対策について教えてください。

大会独自の感染対策マニュアルを作成しました

諮問委員会の意見や日本陸上競技連盟の「ロードレース再開ためのガイドライン」、他大会の状況などを参考に、大会独自の「基本方針の概要」と「感染拡大予防マニュアル」を作成し、各種のコロナ対策を実施しました。

前回大会との主な違いは、選手数の半減に加え、全選手を対象にPCR検査の実施したほか、大会前日に行う開会式や、パレードなど県民参加型のイベントは密になりやすいため中止しました。さらに、競技場内は関係者以外の立入禁止、沿道の応援自粛も要請しました。

その分、従来のテレビ生中継に加え、地元放送局にインターネット放送にも取り組んでいただき、観戦機会を増やす努力をしました。事前告知にも努めたおかげで、当日は沿道に密は発生しませんでした。

特に工夫したのは、万一感染を疑わせる選手(体温37.0度以上や、のどの痛み、咳が出る等)が発生した場合の誘導場所や動線の設定です。スタート地点やフィニッシュ地点、沿道など場面ごとに分けて専門家の指示を仰ぎ、「この場合は体育館のここ」「競技場内なら、この部屋」など細かく取り決めました。

どう誘導するかはとても重要なので、諮問委員会と十分相談の上、誘導するボランティアも新たに追加して分担しました。当日、大会に関わるボランティアの方のうち、検温において体温が37.0度以上となるケースが2件発生しましたが、パニックにならず誘導できました。また、検温についても一部の体温計が使用できなくなりましたが、予備を活用しておおむねスムーズに実施できました。

やはり、常に最悪の想定をし、考えられる準備を徹底したおかげで、対応が後手後手にならなかったと思います。事務局に対して、忌憚ないご意見、アドバイスをくださった大勢の関係者の方々に感謝の思いです。
-----------
写真:前日選手受付。関係者に事前説明を丁寧に行ったことで、当時は大きなトラブルがなく運営できた

今回の大会を、どう次大会につなげたいですか?

スポーツに取り組む人に、勇気を与えられたら

今年のレース当日は秋晴れにも恵まれ、トップアスリートから初出場まで幅広いアスリートに参加いただきましたが、フィニッシュ後のインタビューでは多くの選手が「大会開催について主催者や関係者への感謝」を口にされていました。「選手のために」という思いで準備してきましたから、事務局として万感の思いで拝聴しました。

SNSやツイッターなどでも、県民やファンの皆さまからポジティブなコメントをいただきました。また今年に入ってから反省会を開催しましたが、関係者の方からも「開催できて、本当によかった」と言っていただき、苦労が報われた思いです。

次回大会は、まだコロナが収束しきらないなかで難しさも感じながらではありますが、従来の国際大会として、さらに40回の記念大会として盛り上げイベントなども含めた開催ができるよう、検討を進めています。2020大会にはなかった海外選手への対応や、より大規模な大会としての準備が求められます。
   
そういう意味では、昨年の代替大会を開催できた実績はとても大きいですし、コロナ対策についても自信になっています。これをベースにして、今後の感染状況に応じて検討し、他大会なども参考にしながら緊張感を持って対策の精度を高めていきたいです。

今回の大会には東京2020大会組織委員会も視察に来られ、大会後もリモートで情報交換を続けています。今夏の東京大会開催の際には当事務局からも視察に伺い、現場の対策を学び、記念大会に活かすことも考えています。

大分車いすマラソン2020のキャッチコピーは、「このスタートは、希望のはじまり。」でした。第1回実行委員会後に、「何のために大会を開催するのか」と事務局で改めて考え、自然と生まれたテーマでした。このコピーのように、この大会の開催が国内外でスポーツに取り組む方々に勇気を与えるものとなれば嬉しいです。
-----------
写真:当日の選手受付

OTHER PEOPLE他の活躍する人たちを見る

一覧に戻る
ページトップへ