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2021-03-18

車いす単独大会の、伝統の灯を消さないために 【前編】

古澤 直樹さん

furusawa naoki

[所属] 大分車いすマラソン2020事務局、大分県福祉保健部 障害者社会参加推進室 地域生活支援・芸術文化スポーツ推進班 主事

2020年はコロナ禍を受け、例年とは異なる代替大会を開催されました。

多くの支えで無事に終了し、安堵しました

私は大分県の職員として2019年4月から、「大分国際車いすマラソン」の事務局に加わり、ボランティアの調整などを含む総務を担当しています。この大会は1981年に「車いすアスリートだけのマラソン大会」として世界で初めて開催されて以来、国内外からのべ1万人以上の参加選手を誇る伝統の大会です。昨年2020年には40回目の節目を迎える予定で、11月の開催に向け、準備を進めていました。

しかし、昨年1月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を受け、慎重に検討を重ねた結果、海外選手の参加は見送り、国内在住選手のみに規模を縮小した代替大会、「大分車いすマラソン2020」に変更して開催しました。23都道府県から、14歳から70歳まで99名の選手が参加され、多くの方の支えのおかげもあり、大きなトラブルもなく終了しました。私も含め事務局メンバー9名は「開催できてよかった」と安堵しました。

とはいえ、簡単に実現できたわけではありません。はじめに事務局で次の3つの視点を主な課題として検討を重ね、準備を進めていきました。

(1)コロナ禍で国内外の大会が相次いで中止・延期となる中、「日本のパラスポーツ発祥の地」といわれる大分県として、選手や関係者のみならず国内外に広くスポーツの希望の灯を点す意味でも、何らかの形での大会開催に向けて検討する意義がある。

(2)国内外の感染状況を踏まえた大会の開催条件と、密になる場面での解消策など具体的な感染症対策がまとまらない限り、県民の方々の理解を得ることはできず、大会を開催することはできない。

(3)これらから、県内で感染症対策に携わる医療関係者などからご意見をいただき、開催可否や条件、さらに、具体的な感染症対策を早急にとりまとめ、公表しなければならない。

そして、関係各所の意見聴取から始めました。
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写真:大会スローガン「スタートは、希望のはじまり。」は、第1回実行委員会の後に決まった

具体的には、どのように進めたのですか?

賛否両方に耳を傾け、「こうすれば、できる」を考えました

例年は5月の実行委員会後、約半年で開催準備をしますが、今年は実行委員会を7月から10月にかけて、計3回開きました。さらに、県内の医療関係者等からなる「新型コロナウイルス感染症対策のための諮問委員会」を設置し、8月から9月にかけて計3回開催しました。

第1回実行委員会(7月21日)では、40回記念大会の2021年への延期と、その代替として国内在住選手に限定した代替大会(大分車いすマラソン2020)開催の検討などについて議論しました。

代替大会の開催については賛否双方の立場から多様な意見をいただきました。多くの大会が中止されるなか、「歴史ある大分の車いす大会こそ、コロナ禍での開催するモデルを作っていくべきではないか」という賛成の声に対し、「歴史ある大会だからこそ、クラスターが発生した場合の責任問題を懸念」する慎重論もありました。

事務局では両方の意見を重く受け止めました。まず、重視したのは選手の声で、国内(約30人)と海外(約20人)にアンケート調査を行ったところ、「大会開催希望」が6割以上。国内外の大会が相次いで中止・延期となるなか、真剣勝負の場として大会開催を切望する声をいただきました。

一番影響を受けると思われる医療従事者の意見を求めたところ、最初は「厳しい」という声が大きかったですが、「どうしたら、できるか?」と聞くことで、具体的な対処方針を示していただきました。議論の回数を重ねるうちに、「こうすれば、できる」という方向にベクトルが変わっていきました。

第2 回実行委員会(9月9日)では、事務局でまとめた「基本方針案」とともに、「代替大会としての開催」を提案したところ、開催する方向性が承認されました。第3回実行委員会(10 月7日)では具体的な感染症対策を示した「感染拡大予防マニュアル」が承認され、感染症対策を十分に講じた形での大会開催が決まりました。

その後、大会当日(11月15日)まで、通常約半年をかけて行う開催準備を1カ月強で行ったため忙しすぎたのか、記憶があまり残っていませんね。
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写真:出場選手記者会見。選手の声が開催への大きな後押しとなった

代替大会のボランティア体制について?

異例の配置で、新しい風が吹きました

例年は約2,000人のボランティアに支えられていますが、諮問委員会から「半減して密の回避を」と指示がありました。部署ごとに検討し、可能なところから人数を削減していった結果、最終的にボランティア・関係者を合わせて約1,400名での運営となりました。

広い意味でのボランティアとして、医療関連のスタッフは通常の2~3倍の増員で対応しましたが、通常の役割を担うボランティアについては人数を減らした分、例年より大変だったという声もあり、そこは心苦しく思っています。

ボランティアに対するコロナ対策としては衛生物品の配布、さらに選手との距離が近い部署のスタッフにはマスクに加えフェイスシールドも着用してもらいました。体調管理チェックシートの提出にもご協力いただくなど、場面ごとの感染症対策をしっかりと講じました。こうした感染症対策には一定の評価をいただいたと考えています。

もう一つ、これまで地元の通訳ボランティア組織Can-do(キャンドゥ)の皆さまが海外選手の通訳や接遇を担当いただいてきましたが、海外選手の来日がなかった2020年大会では通訳業務とは異なる役割で大会ボランティアの核としてご活躍いただきました。

それでも、「普段とは違う役割で参加したことで、事務局や他のボランティアの気持ちが理解できた」といった感想を聞きました。別の形でもやりがいを感じていただけたようですし、例年とは異なる視点で大会に参加いただく機会となり、いい意味で新しい風が吹いたと感じました。

異例の形でも受けていただけたのは以前からCan-doの代表に大会実行委員として参画いただき大会の意義もご理解いただいていたことが大きかったと思います。加えて、10月にはCan-doメンバーの皆さまに対して説明会を開いたことで、通訳業務ではないにもかかわらず、例年の6割ほどの皆さまが参加くださいました。本当に感謝しています。
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写真:当日のボランティア受付。一般募集したボランティアも多く参加した


…【後編】に続く。
車いす単独大会の、伝統の灯を消さないために【後編】はこちらから

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