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2020-04-09

オリンピックボランティア
ーそれは「人生最高の2週間」ー
#5 英語ができない⁉

西川 千春さん

Nishikawa Chiharu

[所属] 笹川スポーツ財団特別研究員
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 ボランティア検討委員
日本スポーツボランティアネットワーク特別講師

オリンピックロンドン大会から、ソチ、リオと過去3大会にボランティアとして参加した経験をもとに、スポーツボランティアの楽しさを伝えるコラムを連載します。(全6回予定)

国際的メガスポーツイベントに当事者として参加することで得られる感動や舞台裏など、実際に起こったさまざまなストーリーを綴っていきたいと思います。「人生最高の2週間」の興奮をぜひ体験してください。

《過去の記事》
#1「全てはロンドン2012から始まった」
#2「大会を迎えるまでの道のり」
#3「ロンドン大会、いよいよ活動開始」
#4「活動にはトラブルがつきもの」

あのハンバーガーショップでも・・・

新型コロナウィルス、COVID-19の感染拡大で東京2020大会も1年延期が決定されました。ボランティアとして参加される予定だった皆さんにとっては、落胆と安堵が入り混じった複雑な気持ちではないでしょうか。ポジティブな気持ちを維持するためにも、この与えられた1年を有効に使ってゆくことも大切だと思います。そこで今回はぜひこの機会に英語や手話といった他のコミュニケーションの手段をレベルアップすることについて語りたいと思います。

ボランティアへの講演では「英語ができないのですが大丈夫でしょうか?」という質問を必ず受けます。今までの海外生活や仕事の経験から、英語を勉強することは重要だと考えます。好むと好まざるにかかわらず、世界中の人達が一緒になる状況でのコミュニケーションは必然的に英語となります。英語が公用語である国々、例えば英国、アメリカ、オーストラリア、そしてカナダなどでは問題になりませんが、非英語諸国でのオリンピック・パラリンピック開催にはちょっとした努力が必要になってくるのは想像できると思います。

実際にボランティアとして参加したソチやリオではかなり困りました。一歩オリンピックパークを離れると、まったくと言っていいほど英語が通じません。ソチは黒海に面するロシア南部のリゾート地です。それでも訪れる人たちはロシア人がメインなので、ロシア語以外は必要ないのでしょう。

ソチ大会での活動が始まって数日後に休みがあったので、オリンピックパークから電車で30~40分離れた街の中心に行ってみました。昼時だったので駅前にあるマクドナルドに入ってみました。宿舎でピロシキやボルシチを数日食べ続けたので、ハンバーガー好きの私としてはちょっと気分転換というところです。マクドナルドの店内というのは、世界中若干の違いはあっても大体同じです。メニューだって基本の、ビッグマック、フレンチフライ(フライドポテト)、コカ・コーラなんていうところは変わりようがありません。

というわけで、基本3点セットを頼もうと、
「ビッグマック、ミディアム・フレンチフライ、スモール・コカ・コーラ、プリーズ」
とカウンターで注文したところ、どうやら店員の女性が理解したのはビッグマックとコカ・コーラという世界共通語だけだったようです。フライドポテトや飲み物の大きさなんて全く通じないのです。しょうがないので英語、日本語、身振り手振りで意思疎通を図ろうとするのですが、店員さんは無表情のままです。
しばらくすると急にいなくなって店長らしい大柄の男性を連れてきました。彼もどうやら英語は全く話せないようです。仕方なく急ごしらえで作ったであろう写真がついた英語メニューを取り出して、「写真があるからわかるだろう?指さしてくれ」というわけです。私はロシア語がほとんど分からないので、話もせずにカードを突き出してくるだけです。
最後は無事に念願のビッグマックセットにありつきましたが、世界のマクドナルドでも国が変われば全然英語が通じません。

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写真:待望のビッグマックにまさに食らいつく

リオで感じた言葉以外のもの

リオもソチと同じように英語の理解度は驚くほど低かったです。

日本のジャーナリストが「ウォーター(水)が通じない。ポルトガル語でアグア、と言わない限り分かってもらえない」とぼやいていました。ところが前にも書いたように、ブラジルは言葉が通じなくても伝えようとするパッション、熱意があります。困っている人がいれば誰かがすぐに助けてくれる、とてもフレンドリーな人たちです。

「アイルトン・セナ、知っているでしょう?」

リオで満員バスの中で、前に立っていた男性がユニフォームを着た私の顔を見るなりニコニコと話しかけてきました。もちろんポルトガル語です。よく見ると自動車レース F1レーサーで、ブラジルの英雄であるアイルトン・セナのTシャツを着ています。ホンダがエンジンを提供していたマクラーレンチームで活躍した世界チャンピオンでした。悲劇の事故でなくなりましたが、日本との深いつながりを持ったセナは、日本でも多くのファンがいたことで知られます。
どうやら私を日本人とみて、思わず話しかけてきたんでしょう。私も「ホンダ、鈴鹿。日本人はセナが大好き」なんて英語、日本語、ゼスチャーでコミュニケーション。お互い直ぐに分かり合ってしまいました。言葉が通じなくても熱意があれば意志は通じるものです。

私は大学で英語を教えています。そして断言しますが、ブラジルやロシアに比べれば一般の日本人の英語レベルは格段に高いのです。義務教育で習う単語はかなりの範囲をカバーしています。日常会話は中学校英語で、充分通じます。問題は今まで話す機会が少なかったこと。また、一般的に遠慮がちな日本人は失敗を恐れてしまうのでしょう。
この与えられた1年を利用して、もう一度英語のおさらいをするのはいいチャンスじゃないでしょうか。あるいは英語以外の言語や手話を勉強してみるのもいいでしょう。後は勇気をもって話しかけることだけです。私はいざとなればどうかかなると、結構楽観的に考えています。

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写真:リオ大会の仲間たち

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