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2020-02-20

オリンピックボランティア
ーそれは「人生最高の2週間」ー
#4活動にはトラブルがつきもの

西川 千春さん

Nishikawa Chiharu

[所属] 笹川スポーツ財団特別研究員
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 ボランティア検討委員
日本スポーツボランティアネットワーク特別講師

オリンピックロンドン大会から、ソチ、リオと過去3大会にボランティアとして参加した経験をもとに、スポーツボランティアの楽しさを伝えるコラムを連載します。(全6回予定)

国際的メガスポーツイベントに当事者として参加することで得られる感動や舞台裏など、実際に起こったさまざまなストーリーを綴っていきたいと思います。「人生最高の2週間」の興奮をぜひ体験してください。

《過去の記事》
#1「全てはロンドン2012から始まった」
#2「大会を迎えるまでの道のり」
#3「ロンドン大会、いよいよ活動開始」
#4「活動にはトラブルがつきもの」

トラブル発生!さて、どうする?

オリンピック、パラリンピックのように多くの人達が集まるイベントでは多かれ少なかれトラブルが発生するものです。来場者同士でもめたり、関係者がフラストレーションをボランティアに向けてくることもあります。
こういった時には冷静に落ち着いて対応するのが第一です。まず口答えをしないこと。相手がさらに怒り出す可能性があります。それよりも相手の話を聞きながらガス抜きをするのです。そして状況が困難な場合、自分だけで解決しようとせずに、すぐにチームリーダーやマネジャーに報告して対応してもらうことです。

ロンドン大会では、ボランティアの同僚が日本人記者ともめた状況に遭遇したことがあります。男性の日本人記者がイギリス人の同僚に八つ当たりしていたのです。どうやら予定していた重要な選手インタビューを失敗してしまったようです。同僚はたまたまそこにいただけで、彼の責任ではありません。記者は、彼のユニフォームを見て、キレてしまったのでしょう。私はチームリーダーをしていたのですぐに中に割って入りました。

「ボランティアの西川です。どうされましたか?」

日本語で話しかけると、記者はびっくりして一瞬ひるんだのがわかりました。急に日本人が出てくるなんて想像もしてなかったのでしょう。
またこういったケースでは必ず「ボランティア」だと名乗ることがコツです。この一言で興奮している相手も少しは遠慮するものです。記者も最後は冷静になって自分のミスだと気づいたのか、「失礼しました」と謝っていました。今となっては懐かしい思い出ですが、現場ではいろいろなことが起きるものです。

リオ大会では、こんなことがありました。卓球会場の記者席で日本と中国の記者がもめていました。席の取り合いです。顔見知りになっていたその日本の記者に声をかけると「ここ予約してたのに、この中国の記者が無理やり横取りしたんですよ。どうにかして下さい!」とのこと。どうやら両国間の領土紛争勃発です。中国の記者曰く

「過去に何回もオリンピック取材してるけど、そんな予約システムなんてないわよ」
と取り付く島もなし。

このままではさらにエスカレートしかねない、という訳で急いでメディア担当のマネジャーを呼ぶことに。その間も黙っていると本当にケンカになりそうだったので

「まあまあ、落ち着いて。今責任者を呼んでますからちょっと待っててください!」

とりあえず両者を静かにさせることには成功。ようやく到着したマネジャーが1席ずつを譲り合う折衷案でどうにか解決にこぎつけたのです。記者たちはプロで、仕事として大会に乗り込んできます。選手と同じく、オリンピック、パラリンピックは自分のキャリアがかかった大舞台です。当然、神経は極度に張りつめていて、失敗は絶対許されないことを考えると、多少要求が厳しいのは仕方がないことなのです。
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写真:エクセルの卓球会場

ロンドン大会での大パニック

最後に、最も印象に残っているトラブルが、ロンドン大会初日の大混乱です。言語サービスチームはエクセル会場の7競技すべてに対応するので、他の会場よりも多い約100名の言語サービスボランティアが配置され約30か国語に対応していました。
私は、事前に卓球のテストイベントを無事こなしていたので「こりゃ、本番も楽勝!」と思ったのが浅はか。チェックインを済ませて言語サポートのオフィスに入っていくと大変なことが起こっていました。

同僚の日本人通訳、ゆき子さんが、
「チャーリー(私の愛称)、大変!マネジャーが大パニック。」
と駆け寄ってくるじゃないですか。

エクセルは5つのアリーナに分かれていて、違った競技が同時進行しています。どうやら通訳の配置がうまくいかず、インタビューを片っ端から失敗していました。当然各アリーナのメディアサポート担当者からクレーム殺到で、マネジャーの処理能力の限界を超えてしまい「あと5分で試合が終わるから中国語通訳一人、すぐに回してくれ!」という状況が頻発します。

マネジャーは顔面蒼白。大変な状況でした。

状況を対処するために、私は中堅層を集めて私の考えを説明しました。
まずアリーナごとにチームリーダーを任命すること。言語サービスには当初チームリーダーは配置されていませんでした。
次にいくつかの言語グループに分けて拠点となるアリーナを決める。そこから必要に応じて送り出す。
例えば東アジア語(日・中・韓国語)は、一番必要とされる卓球会場を拠点とし、必要に応じて他の競技会場に送り出す、という具合です。

そしてチームリーダー間で絡を取りながら、現場の判断で通訳をやりくりし、すべての状況は現場のリーダーから、オフィスにいるマネジャーに逐次連絡を入れることを提案しました。全員賛成、即刻実施です。
やってみるとコミュニケーションがうまく取れて、状況の把握ができるようになり、インタビューをミスするケースも激減しました。相変わらず通訳が会場を駆け回るのには変わらないのですが、時間が読めます。

そしてマネジャーの顔にもようやくスマイルが戻ってきました。ロンドン大会ではこのリーダーシップがとれる、中堅層が多く参加していたことが成功の大きな要因だったのではないでしょうか。

現場での臨機応変なリーダーシップ。これこそが崩壊寸前だった私たち(そしてマネジャー、笑)を救ったのでした。
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写真:ミックスゾーン、卓球の吉村真晴と丹羽孝希のインタビュー通訳

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