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2019-08-21

地域のボランティア活動から世界へ

堀内 芳洋さん

Horiuchi Yoshihiro

[所属] 学校法人津田塾大学

[職業] 大学職員

青年海外協力隊 2014年度1次隊/ブータン/柔道

スポーツボランティアを始めたきっかけは?

自分が受け取ったものを、また次の世代へ

高校を卒業する時、それまでお世話になった柔道部の顧問の先生が転勤になり、次の顧問の先生が柔道経験者ではなかったため、週に一回程度、母校の後輩たちの指導を任されたのがはじまりです。

その後、柔道は趣味として続けていました。引っ越しをした際に、新たに柔道できる場所を探していたところ、職場の向かいの小平市総合体育館で小平柔道会の活動が行なわれていたんです。最初はそこで自分の練習をするつもりだったのですが、会員の大半が小・中学生だったため、子どもたちへの指導を手伝ってくれないかと依頼されました。

私も中学生の時に通っていた柔道会では、その地域に住んでいた方が、ボランティアで指導をしてくれていました。自分がしてもらったように、柔道の知識・技術や経験を次の世代に受け継いでいくということは、とても自然なことだと思い、そこから約6年間、小・中学生にボランティアとして柔道を教えていました。

海外で指導するようになったきっかけや、活動について教えてください。

旅のその先にあった国際協力の道。
柔道がその道を拓いてくれた

大学で国際関係学を学んだのですが、ことばや文化・宗教など、さまざまな違いのある国やそこで暮らす人たちの事を知りたいという思いから、少し長い休みがあればよく海外に行っていました。しかし、観光地に行ってもなかなか現地の人たちとふれあうことは難しく、なにかもっと違うかたちで交流をしたり、途上国のために力になったりすることはできないかと考えていました。

ある時、インドネシアで柔道を教える日本人の記事を見て、自分が今までやってきた柔道がその可能性を拓いてくれるのではないかと思い、記事で紹介されていたインドネシアの道場を訪ねました。それがきっかけとなり、その後は柔道着を持って東南アジアや南アジアを旅するようになりました。柔道は日本で生まれた武道・スポーツであるのに、遠く離れた国々の、しかも生活が豊かとは言えない地域の子どもたちが一生懸命柔道に打ち込む姿を実際に目にして、ここに自分の求めていたものがある、とますます関心を持つようになったのです。

そういった経緯があって青年海外協力隊(現・JICA海外協力隊)への参加を決め、2014年から2016年まで、ヒマラヤ山脈の東側、インドと中国の間に位置するブータン王国で2年間、柔道の指導者として暮らしました。ブータンでは、主に首都ティンプーにある道場で青少年への指導や、選手の強化、柔道普及のためのデモンストレーションなどを行いました。ネパールなど近隣国を訪ねた経験があったので、ブータンでも文化や習慣の違いなどの面で戸惑うことはありませんでした。

しかし、1週間の旅行と2年間腰を据えて指導することは、根本的に違いました。短期間であれば、柔道の楽しさを伝えるだけでも活動の成果と言えますが、2年間となるとそういうわけにはいきません。生徒たちに、柔道の厳しさとその先にある価値を伝えていくことには苦労しました。柔道を始めてみたももの続かない子もたくさんいましたし、中には、「スポーツを一生懸命やっても食べていけないのに、そんなに柔道をやらせる意味はあるの?」という考えを持つ保護者が、子どもが道場に行くことを止めてしまう、ということもありました。

確かに、柔道を一生懸命やったからと言って、柔道で生活ができるわけではありません。しかし、私は努力を積み重ねてそれが形になること、いわゆる「成功体験」を積み重ねていくことが人間の成長過程で大切なのではないかと考え、柔道を通して子どもたちにそんな経験を積んでもらいたいと思っていました。そのために、昇級試験や国外遠征、柔道デモンストレーションの機会など、子どもたちが日々の努力の成果を実感できる場をつくるように意識していました。

帰国してからのブータン柔道とのかかわりは?

教え子とともに、
2019世界柔道選手権東京大会へ

ブータンで柔道が始まったのは2010年ですが、2016年にこれまでの活動実績が認められて国際柔道連盟・アジア柔道連盟に加盟することが決まりました。それ以降、公式の国際大会に参加できるようになり、帰国してからもブータンの選手が出場する大会にブータン柔道協会からの要請を受けて日本から現地に駆け付け、コーチとして帯同しました。

香港で行なわれた2017年に香港で行なわれたアジアカデ・ジュニア柔道選手権大会では、とても緊張したことをおぼえています。選手にとってだけではなく私にとっても公式国際大会デビュー戦でしたので。そして、2019年8月25日から日本武道館で開催される2019世界柔道選手権東京大会には、3名のブータン人選手が出場し、私もコーチとして帯同します。国際柔道連盟が主催する世界的規模の大会への出場は、今回が初めてです。

私がブータンで指導していた時、教え子たちの中からいずれは世界的規模の大会に参加する選手が出ればよいなと思っていましたが、実力はまだまだですし、大会参加にかかる大変な費用を自分たちで捻出することは難しい状況でした。10年先か20年先になるかわからないけれども、大きな大会に出場できる時が来たら、自分もなにかしら協力できればよいなと思っていましたが・・・そのチャンスがこんなにも早く巡って来るとは想像もしていませんでした。(笑) 

ブータンの柔道協会からこの話を聞いた時はうれしかったです。また、こうしてかつての教え子たちの成長を見ることができるのも、幸せなことだと思います。世界大会に出場する各国のオリンピック代表候補選手たちとはかなりの実力差がありますが、今回の出場がよい刺激となり、選手たちがより一層、上を目指すためのきっかけになってくれればと思っています。

スポーツやスポーツボランティアの魅力とは?

スポーツの力で、世界はひとつになる

スポーツにはことばや文化の違いなど、さまざまな壁を取り払ってくれる力があります。誰もがなにかしら好きなスポーツがあると思うんです。国際協力やボランティア活動に携わってみたいけど、得意なものがあるわけじゃないし、語学も苦手だから・・・と、何もせずにあきらめてしまっている人は多いと思いますが、例えば「走る」ということを共通項として、世界中の人たちと時間を共有することはそんなに難しいことではありません。スポーツが国際協力やボランティア活動のハードルを下げ、それが私たちの世界をひとつにしてくれるのではないでしょうか。

今後もブータンの柔道をサポートしながら、スポーツを通じた国際協力について、多くの人たちに伝えていくことを続けていきたいと思っています。

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