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ボランティアも試合を楽しむ
そんな「真のスポーツイベント」を
全国に広げていきたい

有森 裕子さん

Arimori Yuko

ボランティア経験20年
バルセロナオリンピック銀メダル アトランタオリンピック銅メダル

INTERVIEW 01 アスリートとして成長していく中でどのように「ボランティア」と関わってきたのかを教えていただけますか?

選手時代には気づかなかった
ボランティアという存在の大切さ

私はもう50歳を越えましたが、私が学生の頃は、今みたいに「ボランティア」をするという感覚はありませんでした。スポーツ界にはまだ「ボランティア」という概念がなかったと言ってもいいでしょうね。初めて「ボランティア」という存在が注目され始めたのは、“東京マラソン”からだったと記憶しています。そこで「スポーツの現場でのボランティアってすごく大事だよね」という流れができたのだと思います。私も運営を支える役目に駆り出されることもあったのですが、そのときは“単なる仕事”として役割を果たしていました。「手伝って」と言われて受け身でやっていたし、もちろん「ありがとう」と言われたこともなかったですし、それが昔は当たり前でしたからね。
明らかに私の意識が変わったのは、私自身が大会を支える側になったときです。96年のアトランタオリンピックが終わったときに、カンボジアのアンコールワット国際ハーフマラソンに誘ってもらったのです。「カンボジアで自分が走ることによって何か変化がある」、「自分のできることで何か役立つことがある」、そんな思いから参加を決めました。その後、私自身が呼ばれていくのではなく、自らの意思で関わるために、「スポーツを通じて国境、人種、ハンディキャップを超えて希望と勇気の共有を実現」する目的のNPO法人「ハート・オブ・ゴールド(HP: www.hofg.org)を立ち上げて、“大会を作る側”に回りました。大会を組み立て、アスリートと大会を支える側の関係を意識するようになり、そこで初めてボランティアという存在の大切さに目が行くようになったのです。私が「これからもスポーツを通じて生きていきたい」と思った人生のターニングポイントでした。
運営に関わると、大会を毎年無事に遂行することの大変さが伝わってきます。朝早くから道路をきれいにし、全ての給水ポイントに人が立ち、マラソンのルートを確認する。現役時代、私たち選手は大会側に文句しか言っていませんでしたが、その浅はかさが今は悔やまれます。毎年スポーツ大会を継続することの難しさ、今だからこそようやくわかります。
(写真提供:ハート・オブ・ゴールド)

INTERVIEW 02 有森さんが考える“理想のボランティア像”とは?

ボランティアも楽しんで
選手と一緒に大会を盛り上げる

2007年、私の引退試合となった東京マラソンが開催された日は、雪もちらつき凍るような寒さで大変な一日でした。沿道には傘も差さずに一生懸命活動しているボランティアの方々がいました。「自分たちもこのマラソンに関わっているんだ」という意識でボランティアをしている方が多かったように感じました。
海外の試合では、選手と一緒になって楽しんでいるボランティアの方をよく見かけます。日本のボランティアはまだまだ堅苦しいところもありますが、これからは、ボランティアが選手と一緒に楽しんで大会を盛り上げていくことで、本物の大会になっていくのだと思います。
それと同時に、選手もボランティアの方々に対するリスペクトを忘れずにいられると素晴らしいですね。

INTERVIEW 03 引退したアスリートへボランティアの先輩としてアドバイスをいただけますか?そしてボランティアをやりたい方へのアドバイスもお願いします

「50円」しか財布にないのに
「300円」の努力をしなくていい

引退後のネクストステージとして、アスリートを社会貢献活動の世界へ誘ったり、声をかけたりしています。実のところ、現役時代の名声をもとに仕事で生きていくというのは、大変なでことなのです。現場に戻って指導にあたるか、新規のビジネスを立ち上げる勇気を出すか、アスリートは迷うところだと思います。ここはアスリートによる社会貢献(=ボランティア)と並行して考えなければならないところだと思うのですが、我々アスリートも空気を食べて生きてはいけないですからね。
幸い、私が競技者としてやってきた「マラソン」というスポーツは、引退後も多種多様な仕事があり、高橋尚子さんや私のように、仕事とボランティアを両立しやすいのかもしれません。
でも、関わり方ってどんな形でもいいと思うのです。実際に現場は人が必要で、どんな動機でも、どんな小さな活動でも、参加してくれれば助かります。その形として報酬が出てもいいし、まったくの無償でもいいし、そこは本人の価値観の問題。受け入れる側も「こういう人じゃなきゃダメ」というのではなくて、「どんな人でもいい。でもしっかり趣旨を理解してきてね」と。ボランティアってこういう人と決めつけないほうがいいと思うんです。
「50円」しか財布にないのに「300円」分の活動をしようとする人がいます。私は子供たちに、「50円しかないなら300円のことはしなくていい」と伝えます。まずは自分の勉強をしてきなさいと。そして「命ある人間で生まれてきたなら、最低限自分の人生に対して自分自身に最大のボランティア人たれ」と言います。その精神がなくて、気ままに来られても現場は困る。その気持ち、思いを持つことが、ボランティアの継続につながると思っています。
(写真提供:ハート・オブ・ゴールド)

INTERVIEW 04 2020年東京大会に向けてボランティアはどうすべきだと思いますか

オリンピックのボランティアが
未来を担う子どもたちの“学び”に

ボランティアにいろんな選択肢があるといいと思います。老若男女、子どもでもご年配の方でも、専門性のある人でも、多種多様な人が関われることがとても大事だと思います。そこには子どもたちの“学び”があってほしいし、“教えの場”でもあってほしい。これからの若い世代の人が、オリンピック・パラリンピックを通して、多くの現場や機会を得てほしい。いろいろなアイデアを集めて、「こんなこともボランティアになるのね」と、自分たちのオリンピック・パラリンピックを楽しんでもらえるようにしたいですね。
その意味でも「オリンピックが来るからこうしよう」ではなくて、「これはオリンピックに関係なく社会において必要だからやろう」となって欲しい。“アスリートファースト”というのは大会期間中だけであって、大事なのは“社会ファースト”。レガシー(遺産)と言われますが、それは単なる建物を残していくことではなく、いろんな人の気づき、社会の成長こそがレガシーになる。社会ファーストのオリンピック、その意識を持ってボランティアの皆さんも応募してもらえたら嬉しいです。

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